介護事業所の責任者様・事務長様、「介護ソフトの導入をしたいが、何を基準にシステムを選べばいいかわからない」というお悩みはありませんか。
介護ソフトの製品サイトやカタログは、魅力的な機能や売り文句であふれています。
システムを導入しさえすれば、今抱えている問題がパッと解決できるような錯覚さえ覚えるでしょう。
ただ、それだけでは真に事業所のニーズに合った選択ができるとは限りません。
この記事で、確かな選び方のポイントを紹介します。
この記事が、「使いこなせる介護ソフトを導入したい」という悩みのお役に立てば幸いです。
システム選びの前に「選ぶ基準」を明確に
介護ソフトを選ぶ際には、情報収集を行う前に「選ぶ基準」を考えましょう。
選ぶ基準は、4つのステップで作っていきます。
- システム導入の目的を明確にする
- 欲しい機能を定める
- 必要な条件を調べる
- 選ぶ基準を決める
システム導入の目的を明確にする
システムを導入するためには、時間・労力・コストがかかります。
せっかく時間・労力・コストをかけて導入するのですから、導入の効果を期待してしまいます。
導入の効果は、現在抱えている課題がどれくらい解決できるかという点ではかれます。
現状の運用を整理する
まずは現状の運用を、下記のポイントから整理しましょう。
管理・記録を行っている資料
資料の例
利用者情報
- フェイスシート
アセスメント
- アセスメントシート
計画
- サービス計画書
介護記録
- 日々の記録
- バイタル
- 食事摂取量
- 水分
- 排泄
- 服薬
- ケアの記録
- 支援経過記録
モニタリング
- モニタリングシート
請求業務
- サービス提供実績票、サービス利用票・別表 など
- 利用者請求書
各管理資料・記録の様式
実際に使用している資料の様式を集めます。
職員がいつ・どのように作成しているか
- それぞれどのタイミングで職員が記録しているか
- パソコンで作成しているなら、パソコンの台数は充分か
- 現在の運用はスムーズに行われているか
作成後の流れ
- サービス計画書の例(紙の場合)
①(居宅)居宅サービス計画書を作成する。
②(居宅)サービス事業所へ、居宅サービス計画書をFAXする。 - サービス利用票の例
①(居宅・月末)サービス計画書をもとにサービス利用票・別表/サービス提供票・別表を作成する。
②(居宅・月末)サービス提供票・別表を各サービス事業所へFAXする。
③(サービス事業所・月末)サービス提供票・別表をもとに、サービス予定を作成する。
④(サービス事業所・月初)実績登録後、サービス提供実績票を居宅介護支援事業所へFAXする。
⑤(居宅・月初)サービス提供実績票をもとにサービス利用票・別表へ実績を登録する。
抱えている課題を明らかにする
現状の運用からどこを改善したいのか、事業所が抱えている課題を考えます。
抱えている課題が明らかになれば、その課題の解決こそがシステム導入の目的となります。
例えば、下記のような課題をよくお聞きします。
抱えている課題と目的の例
- 施設サービス事業所
①紙の記録を見ても、綴り順がバラバラで探すのが大変。
→必要な記録をすぐに探せるようにする。
②紙カルテで過去のバイタルの変遷を確認するのが大変。
→記録からバイタルの変遷をグラフで確認できるようにする。 - 訪問サービス事業所
訪問前に事業所で記録を持参しているが、効率が悪い。
事業所に戻ってから記録をするので、残業が多い。
→タブレットで記録を参照・入力できるようにし、直行直帰できるようにする。 - 居宅介護支援事業所
他事業所に利用者情報を共有する時に、提出用書類を作成するのが大変。
→他の事業所へ情報がリアルタイムで共有できるようにする。
欲しい機能を決める
介護ソフトには、多くの機能がありますが大きく分けると以下の通りです。
1.利用者を登録する
2.アセスメント
3.サービス計画を作成する
4.記録をする
5.モニタリング
6.請求をする
7.情報共有をする
利用者を登録をする
利用者の基本情報を保存する機能です。
選定の際のポイントは
- 他の事業所と情報を共有できるか
- 病院内のシステムから利用者情報を引用できるか
アセスメントを作成する
利用者の状況を収集・分析する機能です。
選定の際のポイントは
- 他の事業所と情報を共有できるか
- 現在事業所で使っているアセスメントの様式が使えるか
- 独自様式のアセスメントを作成できるか
サービス計画を作成する
利用者の支援方針、課題、提供サービスの目標や内容を定義する機能です。
選定の際のポイントは
- 他の事業所と情報を共有できるか
- アセスメントの結果をもとに計画を立てられるか
- 過去の計画を複写できるか
記録をする
提供した介護サービスや健康状態、経過観察、活動状況などを記録する機能です。
選定の際のポイントは
- パソコンが苦手な職員でも簡単に入力ができるか
- スマートフォンやタブレットに対応しているか
- バイタル測定器やICT機器との連携ができるか
- 申し送り内容が見やすいか
- 他の事業所と情報を共有できるか
モニタリングをする
策定したケアプランが適切に運用されているかを検証する機能です。
選定の際のポイントは
- 他の事業所と情報を共有できるか
- ケアプランを基にした評価が行えるか
- サービス提供事業所の評価を基にモニタリングが可能か
- 支援経過記録などを参照できるか
請求をする
月のサービス内容などをまとめる機能です。
選定の際のポイントは
- 居宅の予定やサービス事業所の実績が取り込めるか
- 記録が請求データと連動するか
- データチェック機能が十分か
情報共有をする
口頭や紙媒体での申し送りの代わりに、情報共有をサポートする機能が多くの介護ソフトには備わっています。
選定の際のポイントは
- 共有情報が確実に他の職員の目に触れる設計になっているか
機能以外に使うために必要な条件を調べる
システムを検討する際には、機能以外にも確認するべき条件が大きく4つあります。
動作環境
今あるパソコンでシステムを動かせるのか、必要な機器やソフトが無いかを調べます。
また、システムのインストールや特別な設定が必要かどうかも合わせて調べます。
今後、使用するパソコンを増やしたり入れ替えたりした場合に、簡単にインストールや設定ができるのかも確認したほうが良いでしょう。
- サーバーの有無
- 使用するパソコン・タブレットの動作環境
- インストール方法
- 必要なソフト
オンプレ・クラウド選定のポイント
オンプレミス:事業所内にサーバーを設置してシステムを運用する。
クラウドサービス:インターネットを経由してシステムを利用する。
- 初期費用: オンプレミスはサーバー機器等の初期投資が必要ですが、クラウドはそのようなコストが低く抑えられます。
- 運用コスト: オンプレミスは運用・管理に専門スタッフが必要な場合があります。
クラウドは外部サービスがメンテナンスを担当するため、運用コストが低くなる場合があります。 - セキュリティ: オンプレミスは内部で完全にコントロールできるため、セキュリティが高いとされます。 それには専門的な知識と継続的な管理が必要です。
導入メニュー・サポートメニュー
システムを使いこなすためには、教育やマスタの整備、稼働後のサポートが必要です。
- 実際のシステム導入の流れ
- 操作研修の回数や内容
- 稼働後のサポート体制
- 問い合わせ方法(メール・電話・リモートでの操作など)
- バージョンアップ対応(改正対応や要望や不具合をバージョンアップで対応してくれるかなど)
導入の手間・のりかえやすさ
導入に必要なスケジュールや具体的な作業内容についても調査します。
また、現在使用しているシステムがあってデータ移行を希望する場合は、データ移行が出来るかどうかも調査しましょう。
- 導入にかかる標準的な期間
- 予想される作業
- データ移行の可否(今のシステムからデータが出力できるか、新しいシステムでデータが取り込めるか)
他システムとの連携
他システムと連携する機能を有している場合、介護ソフトで入力した情報が他システムと連携して、より業務効率がアップします。
他システムとの連携例
- 給与計算ソフト:介護ソフトで作成したサービス記録実績を基に、給与計算を自動化
- シフト管理ソフト:介護ソフトで作成したサービス予定を基に、シフトを作成
選ぶ基準を決める
選ぶ基準やその優先度がおおよそ固まり、事業所に導入する介護ソフトのイメージがついてきたはずです。
最終的にもっとも自分の介護事業所に合うシステムを、どのように選ぶかをご紹介します。
予算内で導入できそうか
システム選定の際は、初期費用だけでなく、維持費(ランニングコスト)も考慮します。
具体的には毎月または年間でかかる費用、アップデート費用、必要な追加機能の費用なども考慮に入れます。
- 職員数(ID数)によって費用が変わるのか
- 施設内のパソコンの台数によって変わるのか
- オンプレミスの場合:サーバーの維持費や専門スタッフの人件費の考慮が必要です。
- クラウドサービスの場合:基本的に維持費は低いですが、データ保存量によっては追加費用が発生する場合もあります。
課題が解決できそうか
前述の「抱えている課題を明らかにする」にて事業所が抱えている課題の解決をシステム導入の目的としました。
せっかく時間・労力・コストをかけて導入するのですから、現在抱えている課題に優先順位をつけ、どれくらいで解決できそうかという点でシステムを選びます。
システムを導入すれば解決できる課題なのか、選ぶシステムによって解決できるかが変わってしまうのか、資料やデモ、お試し版の利用の際に確認しましょう。
選ぶ基準を決めたその後の流れ
選ぶ基準が定まったら、いよいよ具体的なシステムの選定に移ります。
システムの選定を行う際には、下記の流れで行うとスムーズです。
各社へ資料請求する
ホームページなどで検索し、各社へ資料請求をします。
事業所の選ぶ基準に合致するかどうかという視点で、資料を確認します。
デモを見る
資料を確認したのち、2~3社に絞ります。
多くの製品のデモを見たい気持ちもわかりますが、あまりに多くの製品を見てしまうと1つ1つの製品の印象がぼやけ、記憶に残らなくなってしまいます。
結局決められない・決めるのに必要以上に迷ってしまう原因にもなりますので、多くても3社ほどに絞りましょう。
お試しで触ってみる
製品のデモを見たのち、お試しでシステムを触ってみましょう。
各社にデモ環境をお試しで触れないか相談してみることをおすすめします。
資料やデモを見ただけでは機能や画面の確認はできても、操作性はどうか・自分や職員が使いこなせるかどうかは、実際に触ってみないとわかりません。
□デモやお試しの際に見るポイント□
- 自分が使いこなせるか?
- 職員たちが使っているのが想像できるか?
- 重視した基準を満たすか?
まとめ
この記事でご紹介した、システムを選ぶ基準の作り方・デモや試用時に確認するポイントは、実際に事業所で相談された内容をもとにまとめています。
介護ソフトの選び方がわからない、とお悩みの介護事業所様はぜひ試してみてください。